ゴールキーパー指導の基本|日本人GKが海外との差を埋めるために磨くべき3つのこと

まず最初にお伝えしたいことがあります。GK指導において、これが正しい・このやり方が正解だというものは存在しません。

世界トップのゴールキーパーであるノイアー・クルトワ・アリソン。この3人が全員同じ理論で育ってきたかというと、サッカーに詳しくない方でも見ればなんとなく動きが違うことがわかるはずです。

ましてや日本人は体が大きいわけでもなく、外国人と比べてパワーがあるわけでもありません。世界のトッププロの動きをそのまま真似させることは一概に正しいとは言えないのです。

さらに言えば、同じ日本人でも人によって動かしやすい方法やとりやすい方法は異なります。各選手の個性とうまく折り合いをつけながら選手を育てることが、GK指導者として最も大切な姿勢だと考えています。

私は現在、小学生・中学生年代のGKを指導しています。所属チームは県1部〜2部リーグ程度で、最初から完成度の高い選手が入ってくるわけではありません。むしろ体格やステップワークに課題を抱えた状態からスタートし、3年間かけて県トップレベルに近づけていくことが指導の中心です。この記事で紹介する考え方は、そうした「これから伸びる選手」を前提にしたものです。

目次

  1. 日本人GKが抱える根本的な課題
  2. ①ステップワーク
  3. ②ポジショニング
  4. ③身体操作
  5. まとめ

日本人GKが抱える根本的な課題

日本人GKと海外GKの最大の違いはサイズと、そのサイズに対しての運動能力です。

ワールドクラスと呼ばれる海外GKのほとんどは、日本人の185cm前後のGKより体が大きいにもかかわらず動けることが多いです。体格差そのものに加えて、幼少期からどれだけ多様な運動経験を積んできたかという育成環境の違いも大きく影響していると考えています。

自分でコントロールできない才能の部分を埋めていくのは、以下の3つだと考えています。

  • ステップワーク
  • ポジショニング
  • 身体操作

それぞれ詳しく解説します。

① ステップワーク

ステップワークは「これをしろ」と決めるものではなく、GKのプレーに生かせるようにするのが一番の目的です。

一番意識してほしいのは細かく・軽く・速く踏むことです。そしてステップを単体で練習するのではなく、何かの動作とつなげることが大切です。

例えばステップしてからキャッチング、ジャンプやストップの後にステップしてキャッチングといった動作を組み合わせることで、試合中に普通の選手よりも一歩二歩多く足を動かせるようになります。これがいざというときの対応力の差につながります。

実際に、中学1年生でセレクションを経て入ってくる選手には、こうした基礎ができていないケースが多くあります。出身の少年団に専門のGKコーチがおらず、保護者の方が”何となく”指導しているケースが多いため、飛ぶ・倒れるといった動作は身についていても、足さばきに癖が残っていることが少なくありません。特に無理に横っ飛びをさせられてきた選手は、足を横に大きく踏み出す癖がついており、動き出しが遅れて間に合わないことがよくあります。

この癖を直すために、私はマーカーを使ったトレーニングを取り入れています。足元にマーカーを置き、歩幅そのものを意識させる方法です。マーカーの色に役割を持たせるのがポイントで、赤はまたいで構える位置、黄色は軸足の位置、青は倒れる際の踏切足の位置、というように意味づけをすると、選手自身が「今どの足をどう使っているか」を理解しながら練習できます。

このトレーニングを半年ほど継続した結果、足さばきは大幅に改善しました。現在はさらにスピードを上げ、もう一歩多く足を運べるようにすることを次の目標にしています。

このマーカートレーニングは、当ブログで大切にしている「思考力を鍛える練習」と「身体能力を鍛える練習」の分け方でいうと、後者にあたります。判断はいったん脇に置き、正しい足の運び方そのものを体に染み込ませることを目的にしているためです。判断力を鍛える練習と混ぜてしまうと、選手の意識がステップと判断の両方に分散し、どちらも中途半端になりがちです。だからこそ、まずは身体の使い方を単独で仕上げることを優先しています。

② ポジショニング

ポジショニングはボールがペナルティエリアの内側にあるか外側にあるかで立ち位置が変わります。

ペナルティエリア内側の場合

ゴールライン上で対処するのではなく、少し前に出て対処する必要があります。ゴールポストから1足分前に出たところから半円を描くようにポジショニングをとるのが基本です。

シュートコースはシューターからはの字で広がっていくため、前に出れば出るほど相手のシュートコースは狭くなります。ただし前に出すぎるとループシュートに対応できなくなるため、ループシュートにも届く範囲でなるべく前に出るポジショニングが求められます。ここに身長とステップワークが影響してきます。

ペナルティエリア外側の場合

外側でも正面か側面かで対応が変わります。

正面にある場合

ロングシュートへの対応が必要ですが、私は内側と同じように少し前に出るポジショニングを推奨しています。理由は2つあります。

ひとつめは相手の選択肢がロングシュートだけでなくスルーパスの方が選ばれやすく、前に出ていることでスルーパスへの対応範囲が広がるからです。ゴールエリア付近まで出るかどうかで守備範囲は歩幅にして3〜4歩変わり、スルーパスの処理においてこの差は致命的になります。

ふたつめは内側と外側でポジショニングを大きく変えることで選手の移動が間に合わなくなるリスクを避けるためです。ポジション移動の回数を減らすことで選手に余裕を与えることができます。

側面にある場合

クロス対応を考えます。ペナルティエリアの側面から直接ゴールを狙うシュートは角度的に難しいため、ゴール中央寄りに構えて少し前に立ちます。ボールがペナルティエリアの角に近いほど自分の位置を下げ、ゴールラインに近づくほど立ち位置を高くするのが基本です。

実際の指導現場での工夫

ここまでの内容は基本的な考え方ですが、実際の指導ではチームの戦い方によってポジショニングの優先順位が変わります。

私が指導しているクラブは、ボールを握って攻めるスタイルを志向しており、ディフェンスラインを高く設定しています。そのためディフェンスラインの背後のスペースは、必然的にGKがケアする必要が出てきます。

ここで最初につまずくのが選手の意識の問題です。多くの選手は「GKはペナルティエリアから出てはいけない」という固定観念を持ってプレーしてきているため、まずはこの意識を壊し、エリアの外に出て良いのだと理解させるところから始めます。ただし、これだけを教えるとロングシュートを警戒しなくなり、逆に失点するケースも出てきます。そこで、味方のディフェンスラインが相手にプレスをかけている状況では背後のスペースをケアし、プレスがかからずディレイで対応している状況ではロングシュートをケアする、というように、状況に応じてポジショニングを切り替える習慣をつけさせています。

この判断力は、単独のGKトレーニングでは身につきにくいため、実際のゲーム形式の練習の中で繰り返し意識させるようにしています。

また、これは指導者として意識しておくべきことですが、選手がポジショニングの判断に意識のリソースを割いている間は、他の部分でいつもならしないようなミスが増えます。頭の中で新しいことを考えながらプレーしている以上、これは当然の現象です。ここで他のミスまで一緒に指摘してしまうと、選手は情報過多になり、肝心のポジショニングの判断も定着しなくなります。伸ばしたい部分を絞り込み、それ以外は一時的に目をつむるという判断も、育成年代の指導では重要だと考えています。

③ 身体操作

私がGK指導で特に大切にしている身体操作は以下の4つです。

  • 腕を動かすスピード
  • ハンドリング(指先・手首の器用さ)
  • 姿勢を低くするスピード
  • 起き上がるスピード

腕を動かすスピードとハンドリング

腕を動かすスピードが向上することで、キャッチングするまでの時間に余裕が生まれます。またハンドリング能力は指でつかみ腕で衝撃を吸収するキャッチングに直結するため、育成年代から意識して磨いてほしい技術です。

姿勢を低くするスピード

育成年代のGKにとって一番の壁はゴロのボールの処理です。現場では「トンネル」「遮断機」という言葉が生まれるほど、ゴロのボールの処理ミスは多く起こります。

最大の原因はボールに対して上からアプローチしてしまっていることです。これを改善するにはボールが到達するよりも先に姿勢を低くしておく必要があります。そのため姿勢を低くするスピードはGKにとって非常に重要な能力です。

トンネルをしやすい選手にはある共通点があります。手だけでボールを取りに行ってしまい、体全体をうまく使えていないケースがほとんどです。ゴロのボールに対してブロックの姿勢を作らせる指導は一般的だと思いますが、そのときに腰(お尻)の位置がしっかり落ちているか、上半身を前に倒してバランスを取れているかまで、指導者は見てあげる必要があります。この部分が普段の練習でおろそかになっていると、試合の中でとっさの場面でトンネルが出てしまいます。

起き上がるスピード

セービングしたボールがはじいてしまったり、味方に当たってセカンドチャンスを与えてしまったりと、ゴール前では不測の事態が頻繁に起こります。そのような状況でもすぐに起き上がって構えに移行できなければ、みすみす失点を許すことになります。さまざまな体勢からすぐに構えに戻れるよう、起き上がり動作をトレーニングしておくことはGKにとって欠かせない技術です。

まとめ

GK指導に正解はありません。しかし日本人GKが海外との差を埋めるために磨くべき方向性は明確です。

  • 🦶 ステップワーク:細かく・軽く・速く。動作とつなげて実戦で使えるようにする
  • 📍 ポジショニング:ボールの位置に応じて最適な立ち位置を判断する
  • 💪 身体操作:腕・ハンドリング・低くするスピード・起き上がるスピードを磨く

次回はキャッチングの技術について詳しく解説します。

Marvez

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